大判例

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大阪地方裁判所 昭和38年(ワ)1053号・昭38年(ワ)5378号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕次に、被告の抗弁(三)について判断するのに、本件売買契約は双務契約であるから、右契約中、先履行義務とされた原告の内金八〇〇万円の支払義務を除くその余の原被告の各義務は、前記認定のとおり、昭和三七年一二月三一日を期限として同時に履行されるべきものであるところ、すでに認定のように、このうち原告は内金としてさらに金一〇〇万円を支払い、一方被告も、本件土地について、すでに原告に対し所有権移転登記手続を了しているのであるから、結局、原告の残代金六〇〇万円の支払義務と被告の前記登記手続義務を除くその余の義務とが、同時履行の関係にあつたものというべきである。しかして、前記認定のとおり、本件売買契約のうち、本件建物部分の売買契約は、解除されたから、結局、原告の残代金五〇〇万円の支払義務と、被告の本件土地明渡義務とが同時履行の関係にあるものというべく、被告の右抗弁は、右の範囲において、理由がある。

もつとも、原告は前記認定のとおり昭和三七年一二月三一日に、本件売買残代金六〇〇万円を被告に提供しており、これによつて被告はいわゆる債権者遅滞に陥入つていると同時に、昭和三八年一月一日以降、本件土地明渡債務について履行遅滞に陥入つているから、民法第五三三条を反対解釈すれば、もはや被告は、右債務について同時履行の抗弁権を有しないと解する余地がある。しかし、双務契約においては、当事者は相互に対価的な意義を有する債務を負担しているのであり、当事者一方の履行の提供により、相手方が履行遅滞に陥入つたとしても、右履行提供者の債務が消滅するわけではなく、右履行提供者が契約を解除することなく、相手方に対しあくまで本来の債務の履行を求めるかぎり、両債務の牽連関係は依然として存続しているとみるべきであるから、自己の債務について再び履行の提供をして相手方の債務の履行を求めるべきものと解しても、右提供者に対して、必ずしも不利益な結果を強いるものとはいえないし、さらに、同時履行の抗弁権は、対立する両債務が、同時に履行さるべきものとして、両債務がいわば相互に満足的に履行されることを担保する機能を持つているのである。従つて、もし当事者の一方が履行の提供をした後においては、相手方は同時履行の抗弁権を失うと解するときは、右提供者が、その後の同人の資力の悪化、目的物の転売などの事情があるにもかかわらず、あくまで相手方に対し本来の債務の履行を求めた場合、相手方は、その債権の担保を失う結果になり、酷な結果となる。されば、当事者の一方が履行の提供をした後、相手方に対し、本来の債務履行を求める場合には、相手方は、なお、同時履行の抗弁権を有するものと解すべきである。(喜多 勝 佐藤栄一 安藤正博)

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